ミネラルウォーターとは、ボトルなどの容器に入った飲料水の中で、地下水を原水とするもののことです。特に、源泉の成分に何らかの調整を行っていないものは、ナチュラルウォーター、もしくはナチュラル・ミネラルウォーターと呼びます。ちなみに、原水が地下水でないものは、ボトルドウォーターと呼ばれます。これらの区分は、農林水産省がガイドラインを定めています。
ミネラルウォーターは、海外のものや国内のものといろいろ出回っていますが、国内でのミネラルウォーターの生産量は、山梨県がトップです。
ミネラルウォーターの始まりは、地下水などの硬度が高すぎて飲用にしづらいヨーロッパを中心に、味の良い地下水のある地域のものを瓶詰めとして飲料水とし、販売したことからです。欧米では、飲用に適する上水道と、排水を流す下水道の間に、入浴や洗濯などに使われる生活用水を供給する中水道が存在しているエリアもあり、上水道でも硬度が高いために飲みにくい水しか出ない地域があるという事情もあり、飲用の水を瓶詰めにしたミネラルウォーターの販売が普遍化したのです。
近年では、ミネラルウォーターは「自然である」とか、「有害な不純物を含まず健康に良い」という理由で、世界的にも愛飲者が増えてきています。日本国内でも、水事情が良いと思われていましたが、大都市圏などの水道水には水源の有機物系のにおいや水道配管のサビ、消毒のための塩素のにおいやトリハロメタンの危険性など、水質に問題があると感じる人が増えてきており、ミネラルウォーターの売り上げも伸びてきています。
ミネラルウォーターにもさまざまな種類があります。ミネラルウォーターの種類には、どんなものがあるでしょうか。
まず、軟水と硬水の違いがあります。水に含まれるカルシウム塩とマグネシウム塩の量の指標を硬度といいますが、この硬度が一定水準より少ない場合を軟水、多い場合を硬水と呼びます。一般的に日本国内で産出されるミネラルウォーターは軟水のものが多く、ヨーロッパで産出されるものは硬水が多いという傾向があります。あなたが飲んでいる水は、軟水である可能性が高いというわけですね。WHOの基準では、カルシウム塩とマグネシウム塩などの塩類の量を炭酸カルシウムに換算したアメリカ硬度(mg/L)で定めており、0~60のものを軟水、120~180のものを硬水、180以上のものを非常な硬水というように決めています。
また、ミネラルウォーターには、炭酸が含まれているものと含まれていないものがあります。ヨーロッパやアメリカでは、ミネラルウォーターの原料となる水にもともと炭酸が含まれているものがあり、ヨーロッパやアメリカでは、ミネラルウォーターといえば炭酸水を指すことが多く、「ガスなし」と特に断りをいれないと、炭酸水が出てくることがほとんどです。日本人は炭酸水を飲む習慣がないので、ミネラルウォーターを買うときはガスなしかどうかチェックすると良いでしょう。「ガスなし」のミネラルウォーターには、炭酸を抜く工程を加えたものと、もともと炭酸を含まない水を利用したものがあります。
ミネラルウォーターといえば、風味の良い水として販売されてきました。近年、ミネラルウォーターは、健康食品の一種としても販売されています。それがバナジウムという成分を含んだミネラルウォーターです。
バナジウムを含むミネラルウォーターは各社から発売されています。特定保健用食品には認可されていないので、効果については表示できないのでされていませんが、バナジウムは、糖尿病の抑制機能の効果があると言う説が出てきました。そこで、バナジウムを含んだミネラルウォーターが、健康食品として販売されるようになったのです。店頭で見かけた方も多いのではないでしょうか。
バナジウムを含むミネラルウォーター以外にも、各社から健康に良い、などと謳った機能水が販売されています。アルカリイオン水がその代表でしょう。
アルカリイオン水は、料理で活躍します。たとえば、昆布のうまみ成分であるグルタミン酸を普通の水の2倍抽出できたり、パンをふっくら焼き上げるなどという新聞記事が出たことがあります。緑茶では、普通の浄水よりカテキンの抽出量が多くなり、水道水より色やアミノ酸抽出が多いと言われます。アルカリイオン水は洗浄の場面でも活躍します。油脂の汚れを落とす効果が高く、条件によっては洗剤よりも洗浄力があったという報告もあったとか。ステンレス、メラミン樹脂、アクリルなどの食器洗いに十分利用できそうです。また、洗濯では、酸性水や超純水より粒子汚れの除去効果、脱臭効果が高いという研究報告があります。
このように、ミネラルウォーターは飲むだけでなく、家事にも役に立つのです。
ミネラルウォーターの品質ガイドラインが、農林水産省によって定められています。「ミネラルウォーター類」とは、ガイドラインでは、「地下水などのうち飲用適の水(カルシウム、マグネシウムなど(硬度)及びpH値を除き、水道法第4条に適合する水という)を容器に詰めたもの(炭酸飲料の農林水産企画に規定する炭酸飲料を除く)」となっています。
ナチュラルウォーターとは、ガイドラインでは、「特定の水源から採水された地下水を原水とし、沈殿、濾過、加熱殺菌以外の物理的・化学的処理を行わないもの」となります。
ナチュラルミネラルウォーターとは、ナチュラルウォーターのうち、鉱化された地下水(地表から浸透し、地下を移動中又は地下に滞留中に地層中の無機塩類が溶解した地下水(天然の二酸化炭素が溶解し、発泡性を有する地下水を含む))を原水としたものとされます。
ミネラルウォーターとは、ナチュラルミネラルウォーターを原水とし、品質を安定させる目的などのためにミネラル調整、ばっ気、複数の水源から採水したナチュラルミネラルウォーターの混合などが行われているものを指します。
飲用水、ボトルドウォーターとは、ナチュラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーター及びミネラルウォーター以外のものを指します。
このように、それぞれガイドラインによって表示区分は違います。普段飲んでいるミネラルウォーターの表示を確かめてみるのもいいかもしれませんね。
今では当たり前のように売られているミネラルウォーターですが、日本ではいつごろから造られるようになったのでしょうか。
日本のミネラルウォーターの幕開けは、明治時代の中期だと言われます。1880年代にスパークリングミネラルウォーターが瓶詰めされて、横浜や神戸の居留地の外国人やホテルに提供されていたそうです。明治19年には三ツ矢平野水が、明治23年にはクリフォード・ウィルキンソン炭酸鑛泉水が発売されていました。六甲山麓の花崗岩層から湧き出る鑛泉水には炭酸ガスを含有するもの以外に、炭酸ガスを含んでいないものもあったとのことです。
その後、昭和4年に堀内株式会社が「富士ミネラルウォーター」を瓶詰めにして発売しました。メジャーなホテル用として開発されたものだったようです。
戦後の昭和24年ごろからは、ウィスキーの水割りが流行り、業務用ミネラルウォーターの消費が増えていきました。ニッカウヰスキー、日本鉱泉飲料、サントリーなどが次々にミネラルウォーターを商品化していきました。この頃はテーブル容器としてガラス瓶入りが主流だったようです。
そして、ついに家庭用が登場します。昭和58年にハウス食品がカレー用の水として、有名な「六甲のおいしい水」を発売しました。これが家庭用ミネラルウォーターのさきがけとなり、販売数は穏やかに伸びていきました。平成に入る頃には大手食品会社のサントリー、キリンビバレッジが家庭用ミネラルウォーターに進出し、ミネラルウォーター市場は大きく膨らみました。
その後も各社からいろいろなミネラルウォーターが発売され、順調に市場を伸ばして今に至っています。
ミネラルウォーターのおいしさは、人によって違います。どのミネラルウォーターの銘柄が好きか、人によって違うと思います。また、硬水と軟水でも味が違うので、好みが分かれるでしょう。
ミネラルウォーターの製造者の研究所では、「きき水テスト」などを行い、統計的に「美味しさ」を分析することで、私たち消費者の嗜好を先取りしようと努めています。しかしそれらのデータは企業秘密でもあるので、社外に出ることはありません。
官能検査(きき水テスト)の分析評価は専門家でも難しいと言われているので、私たち一般の消費者ではなおさら判別が難しいと思われがちですが、私たちは長い間いろいろな銘柄を飲んでいるうちに、自分だけのミネラルウォーターの「美味しさ」を発見し、どのミネラルウォーターがおいしいのか探し出しているのです。
一般的なミネラルウォーターの美味しさは、含まれている多種微量のミネラル成分のバランスによって決まります。おいしさに寄与する成分は、カルシウム、カリウム、二酸化炭素、重炭素、溶存酸素です。まずさに関係する成分はマグネシウム、硫酸イオン、硫化水素、マンガン、鉄、銅、亜鉛などです。これらの成分がすべてバランスしていることがたいせつです。また、成分間の相乗効果もあります。たとえばマグネシウムは渋みに関する成分ですが、カルシウムなどとある割合で共存すると、逆に美味しくなる場合もあります。これらのミネラルの量は多すぎても少なすぎてもいけません。ミネラルを全く含まない水は気の抜けた水になってしまいます。バランスが適量ならまろやかになりますし、多すぎると苦味、渋みなどが出てきます。
そのほか、飲む温度もおいしさに関係すると言われます。ミネラルウォーターの適温は10℃~15℃(夏場は10℃~20℃)だと言われています。